一部アイテムを除き、1つの遠近両用シリーズでは、累進帯の長短を選択可能。
⇒ いわゆる - ロング / ショート の2種類の選択可能 -(最近は中近でも増加中))
例えば、HOYAの両面複合設計 遠近両用レンズ [ Wellna ]シリーズでは、
販売金額が同じで、20mm、14mm または 11mmを選べます。
私が「勝手に」レンズ性能が高いと思っている 日本の3大眼鏡レンズメーカで調べると…。
メーカー名 | HOYA | N 社 | S 社 |
累進帯の長さ | 20 / 14 / 11mm | 14 12 mm | 14 / 12 /10 mm |
※ しかも、プレミアムクラス(1組10〜20万円くらいの)レンズになると、
各社ともに、上記より広い範囲で、1mm単位で選べます。
※通常ランクのレンズだと、2つくらいが普通で、HOYAは両面複合設計の時のもの。
さて、選べるということは、それぞれにメリットがあるからですので、
…【累進帯の長短のメリット】を大雑把に、一部説明します。
・ [ 短いタイプ ]より、遠から近の度数変化が緩やかで中間度数の面積が広い。
→ [ ショートタイプ ]よりも、遠用部の歪みが少ない。
・中間距離の部分を短くした分、近く用度数の面積が広い。
→ 加入度数が強く、中間度数が不要な人には、使いやすい。
※ なお遠方の見え方に着目すると、度数切替りが急な「累進帯ショートタイプ」は、
「遠用部分の歪みが、ロングタイプよりも増える」デメリットがあります。
(これをちょっと覚えておいて下さい。後で話に出ます。)
(1) [ 用途・使い方 ] = 製作の動機・理由 + 具体的内容 で 累進帯を選ぶ。
まず、下表の例のように、左側に、ご自身の製作動機 を書いてみましょう。
次に 製作動機の環境を具体的に、右側に書いてまとめましょう。
具体的には、「対象物とそのサイズ」・「対象物までの距離・作業姿勢」です。
製作の動機・理由 | 具体的な対象物(サイズ)・条件(距離・姿勢など) | ||
(1) 車の運転で、不便を感じる。 | ◇ 対象物 : 道路標識 (視力表の0.7位の大きさ) → 距離 : 100m先 (着席状態) | ||
(2) 料理の時に、苦労している。 | ◇ 対象物 : 大根の桂剥き(視力表の0.7位の大きさ) → 距離 : 30 cm 少々 (起立状態) ◇ 対象物 : 台所仕事全般(調理器具・食材による) → 距離 : 60 cm 少々 (起立状態) ◇ 対象物 : タブレット (7インチでCOOKPAD参照) → 距離 : 70 cm 位 (起立状態) | ||
(3) デスクワークが捗らない。 | ◇ 対象物 : 資料・報告書(文字サイズ特殊性なし) → 距離 : 35〜45 cm (着席状態) ◇ 対象物 : デスクトップ(CAD・具体的文字サイズ) → 距離 : 50 cm 少々 (着席状態) ◇ 対象物 : 模型・設計図(図や写真ご持参で再現) → 距離 : 80 cm 位 (壁掛けまで移動・起立状態) ◇ 対象物: 同僚・来客 (顔・服装) → 距離 : 5 〜 10m 位 (移動後・起立状態で確認) |
例えば、(1) 運転用遠近両用眼鏡の場合、老眼(加入度数)状況で変わりますが、
おおむね、長短どちらでも対応可能で、御本人の見え方の好みをテスト装用で確認します。
(2)の場合、高加入度数になると、中間度数の面積の減るショートタイプより、
ロングタイプの方が使いやすくなる傾向があります。〜 中近両用レンズが良い場合もあり。
(3) の場合、加入度数が弱度なら、多くの場合、ロングまたはショートを好みで選択。
加入度数が強い場合で、中間度数がなるべく必要なら、ロングタイプが快適に感じやすいかも。
※詳細さ・緻密さが要求する場合、
『中距離重視の遠近両用レンズ』 or『 遠用重視中近両用レンズ』も選択肢に。
◆上記例を少し解説しましたが、必ずしもお客様に当てはまるかは別です。
テスト装用時に上記例を参考に、ご自分がどう感じるかを意識して見て下さい。
漠然とテスト装用するよりも、意識することでより良い選択の可能性が高まります。
それではもう一つの選択時のポイントに移りましよう。
(2) 累進帯選択後の注意点 [ レンズ サイズ ] = 累進帯にあった 眼鏡フレーム 選び
(1)のプロセス、そしてテスト装用の結果、累進帯タイプを決定したら、
各レンズ性能を十分に活かせる、[ レンズ サイズ ] のメガネフレームを選びましょう。
補足:
遠近両用等の累進レンズは、レンズ上部から下部に、度数が縦に変化します。
このため、レンズの上下幅のサイズについて記します。
累進帯 タイプ | [ 推奨サイズ ] または [ 注意点 ] - 私見 - | ||
ロング タイプ | [ 推奨サイズ ] 初心者で今まで大きな眼鏡を掛けていた場合 ・ 旧世代設計 : 上下幅 33 mm以上 ・ 現世代設計 : 上下幅 30 mm以上 [ 注意点 ] 上下幅が小さくても、使い方によってはショートではなく、 ロングタイプで快適な人も一部で存在します。 → 私も、上下幅 25 mmでロングを持っていて、使っています。 | ||
ショート タイプ | [ 推奨サイズ ] 初心者で今まで大きな眼鏡を掛けていた場合 ・ 旧世代設計 : 上下幅 30 mm より小さく。 ・ 現世代設計 : 上下幅 30 mm より小さく。 ⇒最小上下幅は、レイアウトで変化するので不記載。 [ 注意点 ] 上下幅の大きい(例えば35〜40mm)眼鏡で作ると、 遠用部も近用部も歪みの部分が大きくなります。 上下幅の小さいレンズデザインで見える範囲を増やす設計は、 上下のある眼鏡にすると、ロングより歪みが大きい性質あり。 |
例えば、近遠両用メガネの設定で遠近両用メガネをショートタイプで製作するなら、
上下幅の狭いデザインで作る方が、歪みが少なく感じて、使いやすい方が多いです。
(実例1)
他店で近遠両用眼鏡の設定で、上下幅のある眼鏡で作られたお客様で、
全く使えなかったお客様に、適度に上下幅の小さい眼鏡を当店製作。
全く問題なくお使い頂いているお客様もいらっしゃいます。
(実例2)
私自身も、ハイグレードの中近両用レンズのショートタイプを、
上下幅45mm位の大きな上下幅の眼鏡で製作した時、
歪みが気になって使い物になりにくかったのを、
上下幅の小さな眼鏡で再作したところ、終日装用可能になりました。
このように、「累進帯の選択」には、使用目的等の明確な意識付けを行い、
その上で、テスト装用時にしっかりと自己評価をできるようにする。
次に、自己評価ができた後は、選択した累進帯の特徴にあった上下幅の眼鏡を選ぶ。
この2段階をしっかりとすることが大切です。
お客様をきちんとリードできるスタッフ・ショップで眼鏡を作れればよいのですが、
そういったことにご心配のお客様は、ぜひ上記の点を注意しておくと良いと思います。
皆様の快適な眼鏡作りを心よりお祈り致しております。(*´ω`)
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